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運命の訪れ
転校初日、瑞希はクラスメイトに囲まれた。
そこからは質問攻めで、楽しくはあるが、大忙しだった。
そんなに一斉に話しかけなくても、なんて思いながら聞き取れたことに一つ一つ返事をしていく。
なんて、面倒なのだろうか。
雨で水滴の着いた窓ガラスをふと見つめると、隣の席の、七瀬と目が合った。
あった目は、直ぐに逸らされてしまい、視界の先には雨水の着いた窓ガラスだけになった。
だが、そんなことはどうでもよかった。
「綺麗…」
意図せず出た言葉に、七瀬の肩は大きく揺れた。
瑞希の周りにいたクラスメイトは、「何が?」「雨好きなの?」と楽しそうに話していた。
違う、綺麗なのは七瀬だよ、その言葉が、発せられることはなかった。
「…うるさいんだけど。煩くするなら別の場所でして。」
ふと聞こえてきた言葉は、隣の七瀬が発した言葉で。
声も、綺麗だ。なんて瑞希は悠長に思った。
「は?ウザ」「陰キャの癖に」と口々に文句を言っているクラスメイトを気にせず、七瀬はうつ伏せた。
「授業の準備しないといけないし、また今度にしない?」
まだ、5分ある。
この5分を、七瀬と使いたい。
そんなことを思い、瑞希はみんなを席に戻した。
俺は、【話したいんだけど】と書いた紙を、七瀬の机に置いた。
それを見た七瀬は、怪訝そうな顔をして文字を読んだ。
その表情は、サアァ…と雨の音が良く似合う様な暗いものへと変わっていった。
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