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ただ一心に、不安。
【話したいんだけど】
渡された紙を握り、春はうつ伏せていた。
目が合った、オッドアイのことを気づかれたんだ、何を言われる?
そんなことが、春の頭の中をぐるぐると巡っていた。
弁当なんか食べる余裕なく、うつ伏せて昼休みという長い時間が過ぎることをただひたすらに待っていた。
「七瀬、起きてる?」
寝ている、そんなことを口走りそうになったが咄嗟にこらえた。
そんなこと言ってしまえば、起きてます、声掛けていいですよ、なんて言っているものだ。
「…七瀬、さっき目が合って思ったんだけど…」
「なにっ?!起きてるす!」
目のことを言われる、そう思った春は、ガバッと起き上がった。
「ふっ、起きてるす…敬語とタメが混ざってるじゃん。だめだ、面白い」
何を言われるのか分からずハラハラしている春に比べ、瑞希は面白いと腹を抱えて笑っていた。
「話したいんだ。ここじゃ騒がしいし、図書室にでも行こ?誰も行かないような場所らしいし」
笑いが治まった瑞希は、春の手を引いて立たせ、そのまま図書室まで歩いていった。
引かれる手を、不安に見つめる春だった。
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