最初で最後?の乾杯

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桜の花びらが散っても、 風の匂いが変わっても 忘れられない人がいる。 いけない恋と分かっていたから、 遠く離れてみたのに・・・ あの夜、 思い切ってあなたの帰り道、 待ちぶせした。 ただただ逢いたかった。 約束のないまま、 時間だけが過ぎていった。 1時間 2時間  ちょっぴり 風が冷たくなってきたその時、 あなたが現れた。 さすがに驚いてはいたけど。 「どこか、飲みに行こうか。」 彼が言った。 最初で最後?の ふたりきりでの乾杯。 「このまま 時が止まればいいのに。」 つぶやいた私に 「そうだね。」 と寂しく微笑んだ あなたの薬指のリングと 空になった私のグラスだけが うす暗いバーの中で、 キラキラと光っていた。
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