カイル達は試されていた。

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 ***  異星人が初めて地球に来訪したのは、西暦2051年の春のことだった。  正確にはそれ以前にもお忍びでたくさん異星人は来ていたらしいのだが、地球人達に認識されていなかったというのが正しい。というのも、2051年の3月に地球に降り立った惑星トリオットの人間たちは、地球人に対してこう告げたからである。 『ワタシ達は、約四億光年先の惑星トリオットから参りました。この惑星に先んじて旅行にきた我々の同士が、この惑星には大変美しい自然があり、美味しいご飯があり、親切な人達がたくさんいると教えてくれたからです。ぜひ、みんなで一度遊びに来たいと思い、はるばる遠くの宇宙から旅をしてまいりました。皆さん、仲良くしてくださると嬉しいです』  彼等は銀色の三角形のロケット、のようなものに乗って地球に降り立った。突然異星人を目にした鳥取県の人々はさぞかし仰天したことだろう。突如として観光名所の鳥取砂丘に、異星人が乗った宇宙船が空から降り立ったのだから。  彼等の同士が、前にも地球に来ていたということも驚いたし、地球人に比較的友好的であることにも驚かされたものである。鳥取砂丘なんて停船しにくいところに降りたのも、宇宙船を着陸させたことで地球の環境に悪影響を及ぼさないように最大限配慮した結果だったのだろう。  彼等が春に、しかも日本にやってきたのは“お花見がしたかったから”という実に微笑ましい理由だった。何でも、以前この惑星のことを母星に伝えたトリオット星人が、日本の桜が大変素晴らしかったと言っていたというのである。  彼等は長い手足に、大量の触手を髪の毛のように頭に生やしていた。肌は青く、眼は金色の爛々と輝いている。掌に指は六本あり、僕も何度か握手さえてもらったが吸盤がくっつくような非常に不思議な感触だった。  明らかに人外だと分かる姿だったが、彼等はとても親切である。この姿が怖いなら特別な装置で地球人に変身しますよとまで言ってくれたほどである。いかに、地球に気を配ってくれていたかがわかるというものだ。 『ワタシ達は、植物をとても愛しています。地球の草花は大変美しく、素晴らしい。海は青く、空は晴れ渡っています。ワタシ達はこの素晴らしい地球の発展のために、さらに協力を惜しまない所存です』 『ほ、本当ですか?それは助かります!』
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