推しへの愛が次元を超える件について

異世界……転生だと!?

　頭が痛い。いや、こんなときこそ落ち着け笛野三奈(ふえのみな)。
　よし、冷静に、冷静にだ、わかったな。素数を数えるんだ。……１つ思い当たる記憶がある。けれどもそんなはずがない。
　時間が経つほど頭の中がぐるぐるして、動悸息切れが酷い。わたわたと体を確認したけれど外傷はなさそうだ。
　ひたすら自律神経失調的に気分が悪いけれども、怪我をしたような痛みはない。というか服も含めて汚れすらなかった。足元が草原だったからそれはそれで幸いだったと思うけれども、いや問題はそういうことではなくて。

　ほんの少し記憶を遡ろう。
　私は十分な時間をとって自宅から出た。
　それは推しの羽具原黒音(はぐはらくろね)様と握手するために事前に握手券を十分量手に入れる必要があったからだ。開場前にグッズを買い占め、いや買い占めたりはしないよ、ファンがたくさんいるのは知っているから。それで聞く用１観賞用１保存用３に布教用１０枚くらいDVD買って新しいTシャツが出てたら着る用２観賞用１保存用３……は欲しいけどTシャツは高いからそんなには買えないような気がして、まあ他にグッズが出てたら同じように買っていやいやそんなことじゃなくってだな！
　今現在。草原にいる理由を考えていたわけで。

　それで私は黒音様のことを考えながらフラフラ浮かれていたついさっき、最寄の逆城駅ターミナルに差し掛かったところでパラリラパラリラと暴走してきたデコトラに突っ込まれたのだ。
　うん。えっとつまり、いわゆるトラック転生ってやつ？
　まじか。