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異世界……転生だと!?
はっと目が覚め飛び起きた。
慌ててショルダーバッグを手繰り寄せ、慌ただしく中身を引っ掻き回す。
どこ、どこだ、ちゃんとある?
私にとって何よりも価値があるもの、当然私の命より、世界のすべてよりも。この期に及んでそれはたった1つしかない。
寝起きの頭の悪さが原因なのか、このわけのわからない酩酊感が原因なのか、うまく頭が働かない。
手元を探しているうちにこうなった顛末を思い出して、酩酊感じゃなくてただ死にかけてるだけなんじゃぁないだろうかという考えが一瞬頭に浮かんだけれど、私の体なんてどうなってもいい。そんなものより大切なものがあるのだ。
ふらつく視界でバッグの仕切りを端から端までテラテラ探る。
どこ、どこ、えっと白い細い封筒封筒! どこだよ!
あった! よっしゃ! 大丈夫だ!
はやく電車に乗らなくちゃ!
そう思って立ち上がって呆然とした。
電車がない……。てか、なんだここ。
見渡す限り、そこには草原が広がっていた。どこまでも続く青い原。後ろを向いても横を向いても全天候型草原だ。
私は逆城駅から電車に乗るところだったはず、だよね。今日の私の行動動機なんてそれしかないもの。
でも駅どころか……。目の前に広がる光景に困惑する。
ぐるりと頭をめぐらすと首からポキと音が鳴った。
私は電車に乗って『アリス・エムル』のライブのある神津区にあるクインテット神津に向かうところだったはずだ。
もう一度辺りを見回す。ぴゅうと風が吹いている。
一体どこなんだよ! ここは!
どうやってライブに行ったらいいんだよ!
わけがわからない。
電車、どこだよ! うおお!
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