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十二月五日 シンビジウム(春蘭又は寒蘭)
拝啓
お誕生日おめでとう
幸せをそれも素朴にし
んじて満足している君。陽の出ない極夜の日々に
百夜の楽しい夏を刺繍する冬を楽しむ君。僕が
焦れる程、穏やかで飾らない君の心は
美しく。ラファエロの『大公の聖母』の聖母を
夢想させる。でも、僕だけの君であってくれと強く願う。
敬具
十二月五日、
僕はその手紙に封をして机の中へとしまった。
ゆらゆらとシンビジウムの影揺らぎ暖炉の明り弾む夜話かな
了
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