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一応、新婚生活?
やっと新しい仕事や職場での関わりにも慣れて、少しずつだが新しい生活全般にも余裕が出てきた。
虎河さんは2日前から香港へ出張に行っている。
初春から根気強く商談をしていた香港のとある食品メーカーとの業務提携の話しがようやく仮契約まで進んだのだそう。
虎河さん、私と同棲し始めた事で気分的な落ち着きと余裕が出来たらしく以前より、自発的に仕事を頑張ってくれている。
交際を決める前、巷に流れていた彼に対する悪評は単なる他人のひがみだったのかな。
彼について、かなり気になってたのは金遣いの荒さと女性関係の派手さだったから、まぁ、その不安は今も拭い切れたワケじゃないが、こうして同棲し始め挙式も再来月に控えてるんだから彼を信じよう、と心に決めた。
今日も通常通り仕事をこなして。
いつも通り帰宅をした夕方、時計を見ながら中国は今何時なのかなぁ……とか、虎河さん、ご飯ちゃんと食べてるかな……とか彼のいない生活も時間の経過と共に慣れてきて。
寂しい気持ちは変わらないけど。
「……仕事、だもんねぇ」
誰もいない部屋で1人――ボヤいたりして。
けど、部屋に響いた声で余計に寂しくなってしまったじゃない、とか。
はーぁ……思わず大きな溜め息が出た……その時
……う ――っ?!
急な吐き気に襲われて、うわぁ……風邪でも引いたかな?
まだ、お休みまでには*日もあるのに……
いいや……今日は何にもしないでこのまま寝よ。
パジャマに着替えて怠い身体を引きづりながら、やっとベットまでたどり着いたと同時に ―― ピンポーン。呼び鈴の音。
誰、だろ ――?
――ガチャ
【あれっ? 開いてる……】
この声……
『あやねぇ~、鍵閉め忘れてるよー。夕飯一緒に食べよ』
玄関から聞こえたのは利沙の声。
あ ―― そういえば今夜遊びに来るかも……って言ってたっけ。
『ごめん、利沙……気持ち悪い……今、何にもいらない』
ベットから起き上がれも出来ない私を見て
「なーに~風邪?」
おでこに手を充てて私の顔を覗き込む
《ん~、少しだけ熱っぽいかな……》
小さく頷いて手首で脈をとりながら
「……いつから?」
「んっとね……さっき、突然気持ち悪くなって……う ――っ!!』
話してる途中にも関わらず再び吐き気に襲われて、慌てて洗面所に駆け込んだ。
うぅー……怠い
「何か当たるようなモノ、食べたっけ……」
寝室に戻ってベットにダイブしながら、考えてみるけど思い当たる節はなくて。
「やっぱり風邪でも引いたかな」
傍らにいる利沙を見ると彼女は何かを考えてるようで。
「り、さ……?」
「あのさ、絢……」
「ん?」
「今月、生理は来た?」
あっ ―― そう言われてみれば……
「……遅れてる ―― 大体、2週間ちょい」
「それだね吐き気の原因」
ちょっ ―― それって、まさか……
「妊……娠……?」
食欲不振。生理予定日過ぎての継続的高温。
原因不明の倦怠感。
”妊娠”が原因だとすれば、それらの症状は全てが納得いくけど。
でも、毎回避妊はしてたし……。
「ここでいくら考えてみたって埒が明かないよ。代わりに予約入れておいてあげるから、明日診察においで」
「う、ん……」
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