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「もう、オレ、限界なんだよ! 今夜こそ、頼むよ!!!」
冷蔵庫を開けると、手前の豆腐が、懇願してきた。
そうだ。
もう、豆腐は、賞味期限が来ている。
彼の言う通り、限界だ。
「う~ん、だけどね、今日は、麻婆豆腐の気分じゃないんだよ」
私は、必死の形相の豆腐に言う。
「何で、麻婆豆腐限定なんだよ! もう、シンプルに湯豆腐でもいいじゃねえかよ!!!」
豆腐も、なりふり構っていられないらしい。
そう、冷蔵庫を飛び出しそうに、叫んで来る。
しかし、私は、この豆腐を、麻婆豆腐にするつもりで買ったのだ。
あとは、麻婆豆腐の元しか、食料はない。
湯豆腐だけでは、夕飯のおかずにならない。
やはり、麻婆豆腐でないと……。
「ごめんね~、やっぱり、今日は、麻婆豆腐の気分じゃないの。ピザでも頼むわ。きみは、明日、麻婆豆腐にしてあげるから」
私はそう言って、冷蔵庫のドアを閉めた。
「ああああ~~~! 待ってくれ~~~!!!」
豆腐の悲鳴が聞こえた。
すまない、豆腐よ。
かならず、明日は、麻婆豆腐を作るから。
ー おわり ー
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