天使が紡ぐ赤い糸

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「それじゃ!帰るよ、沙羅さん! ボーナスありがとう!ずいぶんはずんでくれて 奥さんもあなたにお礼を言ってくれてって 本当に感謝しているよ 」 鼻をすすって涙ぐむ 従業員の隆の背中を笑って叩きながら 沙羅は言った 「どういたしまして!隆君 あなたはとても良くやってくれているから当然よ! 生まれてくる赤ちゃんのためにも よいお正月を過ごしてね!」 中村沙羅のお気に入りの最後の従業員の副店長の 隆は沙羅が経営する 「ヘブン・イレブン・コンビニストア」 の裏口からドアを開けた 途端に雪まじりの突風が店内を吹き荒れる 「うわ~・・・・寒い・・」 「こりゃ今晩は吹雪ますね」 二人は車一台も行きかっていない 人っ子一人いない真っ白な幹線道路を見ながら言った この一週間で沙羅の住む西日本海の小さな町は二度も 豪雪に見舞われた そして大晦日の今夜は天気予報では 三度目の大雪警報が出ている 「沙羅さんも道路が凍らないうちに 早く店を閉めて帰ってくださいね こんな吹雪の大晦日にはもう客は誰も来ませんよ」 「そうね!そうするわ」 「良いお年を!」 「良いお年を!」
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