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コール一回で、蒼一は出た。
『会えたか』
何も言ってないのに、それだけ言われた。
もう菫は帰った。ちゃっかりまた会う約束はした。真也も喜ぶと思う。でもその前に、蒼一に電話をしたかった。
「会えたよ。いろいろ聞けた。そんでわかった。俺、まだガキだわ」
『そりゃそうだろ。まだ俺たち高校生だぜ』
たしかにそうだ。
蒼一の言葉に唇がゆるんで肩の力がゆるむ。
店のガラスに映る自分の顔をぼんやり見つめながら、草太は言った。
「だからな、お前のこと、ちょっと考えてもいい?」
めずらしく蒼一が無言になったけど、かまわず話をすすめる。
「俺のこと好きって言ってくれたけど、俺まだガキだから、よくわかんなくて、でもいい加減な返事はしたくないから、ちょっと考えてみてもいいか。だからそれまで待っててもらってもいいか」
少し長めの沈黙の後、ポツリと蒼一が言った。
『お前、……やっぱ草太だな。お前のそーゆーところが好きなんだ』
「俺もお前のこと好きだよ。同じ気持ちになれたらいいなと思うくらいには」
そう言ってやったら、電話の向こうですごい音がした。転んだのかもしれない。
スマートフォンを片手に、草太はくすくすと笑った。
父親のゲイ発言から始まり母親との邂逅。そしてまさかの親友の告白で、草太の思いもよらない人生の扉が今まさに開こうとしていた。
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