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「メリークリスマス、アリエル。さいこーのプレゼントだ!ウイって言ったかんなー。」
「私こそ!プッサン、ジュテーム、、アイシテイル。」
やべーかわいすぎる。おれのよめせかいいちてーてー。はいよろこんでーってなんなのだれがおしえた?おれだった。なにしてんのかこのおれぐっじょぶよくやった。私の髪に顔を埋めくぐもった声は聞き取りにくかった。アリエル立てる?と、私を抱いたまま立ち上がった彼の力強さにドキリとする。腰に腕を回したハヤトは出迎えた時より背が高い。隣に私が立つと伸ばす猫背は今も変わっていなかった。だがあの頃よりずっと、なんというか、私を、自惚れではなく、愛しんでいる。
「さっちゃんさあ、サンタクロースに雇われてんの?」
「まっさかぁ。わたしサンタからプレゼント貰ったことない。」
日本人にしては長身の青年と赤金髪の青年にエスコートされ私たちの前を歩くサキは、上機嫌なハヤトに振り返りにんまりと笑った。
「エリーァ、はぁちゃんのこと幸せにしてあげてね!」
「まかせろ!間違いなく幸せにしてもらう!」
「?サキ?ハヤト?あー、私が幸せになるのだろう?」
「「違うよ?」」
私の日本語の理解度が足りていないのだろうか。ふたりの顔を交互に見れば、彼らは目配せをしそっくりな満ち足りた笑みを浮かべる。
「俺の幸せはアリーってこと。」
そゆこと。エリーァは、はぁちゃんのこれからの生き甲斐だかんね!
ニシシと笑うふたりは、やはりよく似ている。そういえば。ハヤトには妹がいた。なるほど。妹だったか。それならばいろいろと合点もいく。パチリとサキにウインクした私の視線を遮るようにハヤトが頬を撫で蕩けるような視線を向けた。
「アリー。イギリス人は怠惰だから家族とのニューイヤーカウントは諦めて。年が明けたら俺と一緒に帰ろうな。」
「ほう?怠惰とは聞き捨てならないね。マダム、その男はワーカーホリックだよ、結婚はおすすめ出来ないね。」
「ふざけんなタラだまれよ!?アリー!違うから!俺は家庭を大事にするぜ?!」
「さてね?なにせクリスマス休暇に仕事を持ち込む性分だからね。なぁヒロヒコ。」
「まったくだ。マダムよく考えて?彼がクリスマスに仕事に来るのはこれで2度目だからねぇ。」
サキをエスコートしていた青年たちがニヤリと笑い私に忠告する。途端に吠えるハヤトに彼らは快活に笑った。なんだよもうっ!!と息巻くハヤトが可笑しくて私も吹き出した。
「アリエルまで、、」
情けないハヤトの声に、サキがケラケラと笑うと、つられるようにハヤトももういいや、と笑いだした。キラキラとツリーのクリスタルに反射した光が舞い賛美歌があちこちから聞こえてくる。雑踏の中、キラキラと輝いて見えるサキの後ろ姿が、私にはベツレヘムの星のように思えた。
メリークリスマス。神に感謝を。隣人には愛を捧げよう。
私は年下の恋人の肩にもたれ歩き出した。
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