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城に入るなり政治や法律のことに口を出してきた女はさぞ気に入らなかったと思う。でもそこは私の頑張りによって味方がどんどん増えていった。
「婚礼の儀は一体いつにするつもりなのです」
城に入ったというのに一向に挙式する様子がない私に大臣たちは口を揃えて聞いてくる。
「やらなければいけないことがたくさんあるからそれが一段落ついたらね。大丈夫、陛下も王妃も王子もみんな納得してくれているから」
延ばし延ばしにしてきた婚礼の儀。みんな今か今かと待っていたようだけれど私は政治のほうに時間を割いた。私が結婚に意識を向けることで政治から遠ざけたかったのが見え見えだったからだ。
そして満を持して迎えた今日。今日は本当におめでたい日だ、歴史に残る。
国を食いつぶしている者達の整理整頓する方を優先させていたから、結局婚礼の儀を二年延ばしてしまった。やっと今日私は王家の一員として民に認めてもらうことができる。
長い長い廊下を抜けて民の前に姿をあらわすと皆、熱狂的に私を迎えてくれた。今日は雲一つない青空、私の門出にふさわしい。青空と白いドレス、なんて美しいんだろう。
司祭が祈りの言葉を捧げる。私はそれをニコニコと笑いながら見つめていた。司祭はそんな私の様子が気になるのかちらちらとこちらを見ている。いくら私が美しいからってそんなに見ないで欲しい。
私をエスコートするのは実家から連れてきた執事だ。なぜなら、父はもう亡くなっている。父親代わりとして来てくれたみたい。
なんて素晴らしい日なんでしょう、みんな目を血走らせて私がここに来ることを大喜びしている。
ありがとう。みんな、私もみんなを愛しているわ。
その日、その国は一つの歴史を作った。三百年以上の長い国歴の中でこれほどの悪女はいなかっただろう。民を苦した貴族や権力者たちを次々と殺し、役に立たなければ自分の父親さえも殺してしまった女。
大々的にではなく気がついたらするりと懐に入り込んでいる。気が付いたら誰かが死んでいる。まだ婚約者という立場でありながら、まるでその国の女王であるかのようにすべてを取り仕切っていた女。
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