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国中の人が集まっているのではないかというくらい中央広場は賑わっているみたい。盛り上がっている声がここにも聞こえる。私の名を民が叫んでいる。
私は純白のドレスに身を包んでいる。清く正しく生きてきた私にはふさわしい今日という日。みんなが私を祝福してくれている、なんて幸せなんだろう。
私は幼い頃からこの国の王妃になるために生きてきた。女は男の隣でただニコニコ笑っていればいいと言われてきたけれど、とんでもない。政治を学び、人心掌握を学び、この国をいかに良い国にするかを真剣に考えてきた。
自分こそが王妃に相応しいという女たちがいろいろ画策をしてきたけれど、誰も私に勝てなかった。当たり前だ、私は何もかも全てが一番だったのだから。
幼い頃から何をやっても全て一番だった。努力なんてしたことがない。やれば大体できたから。そんな私がやることと言ったらこの国を動かせる立場になって、この国の人たちみんなを幸せにすること。
それを思い立ったのは五歳の時だった。他の子たちがテーブルマナーを学んでいる時に私は経済学と帝王学を学び常に数歩先を歩み続けた。そのおかげで王族との婚約が叶い私は第一王子の婚約者となった。
本来であれば結婚をしてから王宮に来るのだけれど、私の必死な努力が功を奏し婚約者の立場から城に入ることを許された。私の願いを聞き入れてくれた大臣達は優しい。
なぜそんなことをしたかってこの国を立て直したかったからだ。
私は貴族の中でも地位が高い方だったけれど、お茶会やパーティ参加よりもよく町歩きをした。
そうすると見えてきたのは貧富の差だ、私を激しく罵る家のない大人たち。私を見るなり食べ物を恵んでほしいと走り寄ってくる子供たち。かと思えばそういった者たちに仕事をさせて給料を払わず、自分は裕福な生活をしている者がいる。私が王家に嫁ぐことが決まってからは毎日のようにみんなが口を揃えて言った。
貧富の差があるから心が寂しくなるし死者も出る。
金持ちがいるから貧しい者が生まれる。
仕事をしない上の立場の者がいるから学がなくろくな仕事に就けない下の者がつらい仕事をしなければいけない。
格差社会がひどい、皆平等であるべきだ。
お前はどうにかできるだけの家柄であり権力がありこれから王族になるのならなおさらだ。
何とかしてくれ、一部の人間だけが幸せなのではなくこの国に暮らしている人間全てが平等にしてくれ。
彼らの訴えはもっともだ、私は立ち上がったのだ。
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