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2話
僕の家は学校から限界まで離れている。境界線沿いの、学校とは対角線上にあって。右上左上右下左下と地点ABCDとあるとしたら中学校は地点Aでその少し下に西団地があり、僕の家は地点Dだった。
あまりにも遠い。坂道も多いので斜めに突っ切る道をなるべく選んだルートでも35分は歩くことになる。
3年生になった僕はもう先輩もいないし文句は言われまいと本来禁止されている自転車通学を勝手に行う。楽したいというのは理由として無くはないけど本当はそうじゃなかった。だって実を言うと歩くのは好きなんだ。
じゃあなんで禁止されているチャリ通をそれなのにやるのかって。それは佐藤さんと話したいからというのが本当の理由だった。
「佐藤さんちの団地の自転車置き場はまだスペースたくさんあるでしょ。そこに置かせて!お願い!」と言うお願いをした。これは非常に自然なお願いだった。そこより最適な自転車を置く場所などなかなか無い。
「いいわよ。どうせ誰も気にしないから。でも無くなってもそれは知らないからね」
「ありがとう!」
その日から、僕と佐藤さんのほんの5分程度の通学路デートが始まる。
行きは、人の目もあるし僕に合わせて一緒に行こうとはならないけど、帰りは僕も佐藤さんも同じクラスの帰宅部仲間だ。同時に帰るのは自然だった。僕達はすぐそこの団地の自転車置き場までの距離をなるべくゆっくり。お互いたわいない、いつもクラスで休み時間に話してるような会話をしながら。5分程度の帰路を共にした。その距離は普通に歩くと3分程度なのだが、なるべく一緒にいたかったからとても遅く歩いた。
彼女もそのペースに合わせて、時々立ち止まったり。猫を見つけては止まったりと。本当に短い距離だったけど、あれは間違いなく、デートだった。
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