入店

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店内へ入ると紫のイルミネーションが直接目に当たり、前は何も見えない。 装飾は派手なのに 店員(館の主と言ったほうがしっくり来るかもしない)一人の声が聞こえないくらいの無人館 「すいませーん すいませーん 誰がいらっしゃいますか?」 返事はない。 更に奥へ進む。 派手さはなくなり、水晶玉と病院にあるようなベッドが置かれているだけである。 水晶玉を使って有名人の未来を霊視するような企画はほぼ仕込みだと思っていた概念が崩される。 ガサガサ と足音が聞こえる。 勝手に入っては行けない部屋だったのかもしれない。 慌てて部屋を出ると 40代に見える女性と鉢合わせた。 ガーゴイルチェックのワンピースにベージュの長ズボン 銀のネックレスを提げる姿は若作りしているようだった。 「あら こんなところで もしかしてお客さん? すいません。 買い出しに行ってたのよ。 あぁ 自己紹介しないとね。 私 この忘れ物館を経営している 佐野 みやび といいます。 年齢は非公開だけど、この店を経営して二十年以上はたってるかなー?」 〜えっ? えっ? この人が占い師? いくら普段着とはいえ、かけ離れすぎてるだろ。 年齢も非公開と言っておきながら、経営年数を行ったら必然にわかるだろう。  ツッコミどころ満載だったが、佐野さんはベテランで律儀で第一印象は完璧に近い。 「ちょっと このベンチに腰掛けてて 準備してるから?」 「いえ あの、」 「えっ だって 何かな悩みがあって来たんでしょう?」 「まあ そ そうですけど。」 「なら 準備してくるわね。 あっ ちなみにお名前は。」 「高橋 洋平っていいます。 洋風の洋に平和の平」 「年齢と職業もきかせてもらっていい?」 「二十五歳でサラリーマンやってます。」 〜オーディションかよ.. 「高橋さんね ちょっとまってて頂戴  準備してくるから。」 そうゆうとみやびさんは奥の控室のような部屋へと入っていった。 フランス風のオシャレな筆記体で書かれているせいか、何を書いているのかさっぱりわからない。 ガチャ 「おまたせ 全然イメージ違うでしょ。」 意気揚々のみやびさんの言うとおり、期待以上の変わりよう。 首元 手元に無数の宝石が彩られている中で、服装は黒一色で頭巾を被り 表情がうっすらとわかる程度に顔が隠されている。 「早速本題行くわね、何か思い出したいことある?」 「思い出したいこと? ここは占い専門ではないんですか?」   「占うことは占うけど、ここは過去に忘れた記憶を取り戻す為の館よ まぁ 忘れたものって 物体的なものじゃなくて精神的なものなんだけどね。 ほら ここに書いてあるじゃない。」 赤い宝石を身にまとった指先を追ってみると、確かにこの店の説明書きがされている。 カラスに紛れた小さいニワトリのように順応性が無い。 なにか忘れたようなことはないか? 今ある知恵を振り絞る。 水晶玉を触りながらみやびさんは待っている。 あっ パッと思い付いた事を相談してみよう。
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