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客人は内向的に見えて、なかなか直截的にものを云う。僕も黙っていられない。
「見縊ってもらっちゃ困るぜ、中学生……中学生だよね?」
「ああ、依頼人の伊升ムツミくんだ。学校はどこだっけか」
「黒甜郷学園中等部の三年生です」
聞いたことがない学校だった。制服にも見覚えはない。
「どこか遠くから来たの? こんな街にひとりで?」
「依頼に必要な情報じゃないです」
「依頼の内容は?」
「私を監禁してください」
耳を疑った。隣では、叔父さんが肩をすくめる。
「これの一点張りなのだよ。事情も話してくれないのだ」
「監禁って、犯罪じゃないですか。探偵に依頼するのはナンセンスですよ」
「私は真剣です」
そう云うムツミは無表情だ。成程、ふざけているようには見えないが。
「もしかして、君は誰かに狙われているのか? つまり保護してほしいという意味?」
「違います。自分の身は自分で守れます」
こりゃあ難問だ。叔父さんが手を焼いているらしいのも頷ける。
「まぁ、こういうわけだ。お前に一任するよ。俺はこれから出掛けないといけない」
叔父さんは立ち上がった。思わず「え!」と声が出た。
「やはり真面目に取り合ってませんね」と云うムツミも表情は変わらないものの、不満らしいと分かる。
「大真面目だよ。君が話してくれないので詳細は分からないが、逸見を宛がうことで当面は仔細ないと判断している。一方で俺がこれから出掛けるのは、例の〈人間モグラ叩き〉を調査するためなのだ。急がないとまた死者が出るだろう」
〈人間モグラ叩き〉――現在、茜条斎を賑わせている連続殺人事件のひとつだ。一昨日に叔父さんが被害者の遺族から真相究明の依頼を受けたのは知っている。
「逸見は俺の優秀な右腕だよ。とにかく信頼して、まずは事情を話してくれ。じゃあな」
叔父さんはジャケットを羽織って出て行った。嬉しいことばかり云ってくれるが、すべてムツミに向けた方便なのだと理解した。僕は困った子供の世話役を押し付けられたわけだ。些か以上にテンションが下がった。
「何ですか、人間モグラ叩きとは」
ムツミが卓上に置かれた煎餅に手を伸ばしつつ訊ねる。喋り方も煎餅みたいに平坦だ。
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