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キラキラ星は教室にいる。
昔からどうしても不思議で仕方ないことがある。
何故人は忘れ物をするのか。
そしてその忘れ物に、一時間近くかけて家に帰ってから気づくのか。
「うっそん……」
今日こそ手をつけねばと思っていた、日本史の課題。そのために絶対必要だった教科書が、どこをどう探してもバッグの中にない。完全に教室に忘れてきたのだと気が付いて、私は青ざめた。
「汐莉ちゃん、またぁ?」
渋々再び出かける準備をしている私を見て、母が苦笑いをした。その手には、夕食のために冷蔵庫から取り出したばかりの牛肉のパックがある。今日はビーフシチューにしてくれるつもりらしい。ちょっと寒くなってきた時期だからこれは助かる。そして、私が少し遅くなって帰ってきても、夕食が冷めてまずくなっているということがないような料理だ。
まあそれはそれとして、学校にもう一度戻らなければいけないのは面倒以外の何者でもないのだが。
「汐莉ちゃんって本当に忘れ物多いわよね。家から持って行くものも忘れるし、学校でも忘れるし。もっと時間に余裕を持って動いた方がいいと思うわよ」
「時間に余裕をもってやろうと忘れるもんは忘れるんだからどうしようもないんですー」
私は頬を膨らませてそう返す。今日の場合は、特に急いで家に帰ったわけでもない。今日は部活がないからまっすぐ家に帰れるしちょっとだけゲームもできそうだ、なんて浮かれていたのが原因と言えなくはないが。
「うう、行ってきます」
教室で、ちゃんとバッグの中を確認したはずだったのに、どうして一時間目の日本史のことを忘れていたのやら。
私はしょんぼりしながら、母に挨拶をして家を出たのだった。
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