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桃 5歳 夏
妻が他界した。
僕は悲しみに暮れる間もなく、幼い娘との日常生活を必死に送っていた。
桃は5歳になったばかりで幼稚園では泣かずに元気に過ごしていた。
僕は慣れないお弁当作りをし、妹の助けを借りながらなんとか日々を過ごすことができていた。
一人暮らしの時にしっかりとこの辺りをやっておけば良かった、と少し後悔した。
お陰様で弁当作りにも慣れ、桃もお弁当を完食してくれるようになり、張り合いも出てきた。
丁度妹のところの甥っ子と同じ幼稚園なのも助かった。
どうしても作れない時は、妹が桃の分も作ってくれたりした。
だけどできる限り桃の分は自分で作りたいと思っていた。
桃の様子がおかしい、さっきまで元気に遊んでいたのに。少し咳をしだしたと思ったら、急に大人しくなった。
僕に抱きついてきた桃の体が熱い。
熱が40℃もある。
僕は慌てふためいて、桃を呼ぶ。
桃はそんな僕を元気づけようと笑顔を見せようとするが、パパと呼ぶ声は力なく、ますます僕はどうしていいのかと、パニックになってしまった。
夜間救急へいくと、ほどなく点滴が施され、容態は落ち着いた。
「ママ、、」寝言で小さな声が聞こえる
この子が居なくなるなんて考えられない!
僕は桃を抱きしめた。
「パパぁ、、」
「桃、、パパはここにいるよ」
「パパ、、だいすき」
こんな中でも僕を元気づけようと笑う桃を、何がなんでも一生護る、と心に決めた僕だった。
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