桃 17歳 秋

1/1
前へ
/5ページ
次へ

桃 17歳 秋

高校生活を満喫している娘。 部活動に、サークルにアルバイトと毎日充実してるらしい。 最近は何やら彼氏のような影もチラホラ。 父としてはちょー気になるところだ。 桃の帰りが遅くなると、ついつい桃を問い詰めてしまう。 「ほっといて!」 と突き放され落ち込む。 ある日、桃が泣き腫らして帰ってきた。 「おかえり」というと 涙声でただいまといったきり、、 2階の自室こもる。 どうしたものか。 妻ならどうしたのだろうか。 考えても答えは出ないから、僕は味噌煮込みうどんを作ることにした。 ネギを切る音が下から聞こえてくる。 心地いいリズム。 その音だけでパパが、アレを作っている、というのがわかる。 自分に元気が無い時は必ずと言っていいほど作ってくれる。 大好物の味噌煮込みうどん。 けど、今回の件はそれをもってしても回復できないほどの大ダメージだ。 しばらくは凹んでおきたい気分なのだ。 お願いだから放っておいて、と願う。 今は、じっくりと自分に向き合いたい。 桃の親離れは始まっていた。 「桃?何か食べないと」 「今はいらない」 「そうか、でも冷めちゃうと美味しくないぞ」 「いいから放っといて!今は一人になりたいの!」 「そうか、わかった、、、」 味噌煮込みうどんが二つ、食卓テーブルに並んだ。 僕は独りぼっちでうどんをすすった。 3日も学校を休む桃。 僕はお弁当を作ってみた。 さすがにお腹は空くのか、僕がいない間に何かは食べている様子。 もう、小さい頃の桃とは違うんだなぁ、と思い知らされる。 お弁当を置いて出かけても良かったのだが、ダメ元で声をかけてみる。 「桃、今日、パパもお休みなんだけど、天気もいいしピクニックに行かない?」 桃の部屋の扉が開いた。 「ピクニック?」 「うん」 「お休みなの?」 「うん、この前休日出勤したからね」 「天気いいの?」 「うん、いいよ、お昼は暑くなるって」 「お弁当の中身はなーに?」 「ミートボールと卵焼きとウィンナーときのこのソテーだよ」 「おやつ持っていきたい」 「いいよ、何がいい?」 「いつものケーキ屋さんのチーズケーキが食べたい」 「いいよ、お弁当食べたら買いに行こう」 「支度するから待って」 僕は嬉しかった。 久しぶりに顔を合わせる娘が、ちゃんと成長してるんだなぁと実感した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加