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桃 17歳 秋 のピクニック
車にタープを積んで、近くの緑地公園へ。
平日なこともあり、人は疎らだった。
桃が幼い頃によく来ていたここの風景は大きく変わることなく、同じ場所にタープを張ることができた。
桃も一緒に準備をする。
タープの下にテーブルと二脚の椅子を設置する。
イチョウの葉が黄色く熟し落葉して、黄金の絨毯が広がっていた。
風は冷たいが陽射しは暖かい。
水筒からコップにお茶をうつし、何故か2人は乾杯した。
「あのね」
「うん」
「ありがとう」
「うん」
「あと、ごめんね」
「うん、まぁ、食べようか」
「いただきます」
桃がミートボールに箸をつけて口に運ぶ。
「美味しい、、」
そう言いながら、桃の目からは大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちていく。
「おいおい大丈夫か」
僕はティッシュを差し出した。
「大丈夫、、じゃないけど、大丈夫」
「なんだそら」
「美味しくて泣けるのー」
「そうかそうか、それは良かったよ」
「パパも食べて」
「うん、、なかなか美味いな」
「うん、パパの作ったミートボール好き、世界一大好き」
泣きながら、ミートボールを頬張る桃。
最初はミートボールなんて作れなかった。
裁縫も恥ずかしながらできなかった。
桃のおかげで、料理やゼッケンを縫うこともできるようになった。
「ありがとう」
「あのね、桃ね」
「うん」
「彼氏とね、別れちゃった」
「そうか、、うん」
「パパよりも好きだったの」
「え?!」
「パパよりも、彼氏のこと考えちゃうって意味で」
「ん?うん」
「大好きだった」
「うん」
「だからね、、だからとても辛いの」
「うん」
「パパよりも好きになった人とお別れしちゃったから、ものすごく辛かった」
「そうか、うん、辛かったんだね」
「だからひとりで考えたくて、キツく言ってしまってごめんなさい」
「いや、それはそうだね、大丈夫、大したことでは無いよ」
「まだ強く当たってくれる方が、嬉しいというと語弊があるけど、マシな方じゃないかなって思ってたよ」
「でも、時間が経ってくると、段々落ち着いてきて、お腹も減っちゃうし」
「パパは桃の大好物ばっかり作ってくるしー」
「謝りたいって思ったけど、どうしていいかわからなくって」
「だから、ピクニックに誘ってくれたパパ、nice!って思ったの」
「はは笑」
「桃、やっぱり、パパが大好きだよ」
涙は止まっていた。
お弁当の中身は空っぽになった。
僕の心は満たされていた。
バトミントンをしたあと、ケーキ屋さんに寄って、チーズケーキを買って家路に着いた。
翌朝からは元気に登校していった。
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