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「せーきやー! てめ陸上だろうがよ! 何鉄砲に負けてんだよ!!」
桐山カイが空のペットボトルを投げてきた。
うるさいわい。
どうせ俺は中距離補欠だよ。
射撃部なんて、走るの関係ないような部活の黒川に完敗したさ。
でも相手はジュニアオリンピックのメダリストだぞ!?
……まあ、ベンチの野球部員にも負けたけどさ。
今日はキラキラの奴らの祭り「校内陸上競技大会」だ。
あちこちで野太い声、黄色い声、そして野太く黄色い声があがってる。
今ペットボトルを投げつけてきた西洋芸術的美人は、その凶暴際なりまいキャラのせいで表立ってキャイキャイ言われることはない。
が。
ほれ。
そこでカメラが狙っとるぞ。
あ。あっちも。
あれだな。自分の預かりしらないところで事故画撮られたりすんだな。
ざまあ美形。
俺への悪態をつきながら、春だというのになかなかに激しい太陽を仰いで目を眇めるカイ。光の加減でなんだか宗教画のようだ。
まあ悪魔よりの口汚さだがな。
一回エクソシストに祓ってもらったらいいんじゃないか?
ヤンキー漫画のガン付けみたいな変な顔をして、今度は水の入ったペットボトルを投げてくるカイ。
ん? 待てよ。……こいつには事故画なんてない気がする。
恐ろしい子っ。
で、俺のいたブロック一位通過黒川はといえば、キャイキャイうるさい女子を適当にあしらい、カイからみて少し離れた場所にいた平林さんに向かって手を挙げ「惚れたっしょ」と得意気に笑った。
平林さんを見れば……。
「全体一位になってから言え」
あ……れれ…?
嘲るような口調。
でもその顔に浮かぶ笑顔は「惚れてます」って形どってるように見えるのは俺の気のせいか?
えーと?
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