16人が本棚に入れています
本棚に追加
12
とりあえず影山に礼のスタンプを送っといて携帯から目を上げると、平林さんと黒川が連れ立って歩き始めるとこだった。
どうやら100M×4リレーに出るらしい。
え? 平林さん大丈夫? 目が悪いから体育休んでるくね!?
先の女子の競技が終われば、第一組だったらしくさっそく順番が来て、俺の中ですっかりお姫様ポジとなっていた平林さんは第一走者からのバトンを待つためにトラックに出た。
いや。美しいけれども。目の保養だけれども。
いや、ほんと、荒くれた戦場の中に紛れ込んだお姫様だけれども。
ピストルが鳴って、第一走者が走り出す。
そしてそのバトンが平林さんの手に渡ったとき、思わず息を飲んでしまった。
速っ!
──ああ。
そういやあの人、前に射撃でしょっちゅう表彰されてたじゃないか。
何かのスポーツに秀でたやつって、結局どのスポーツやってても目が出てんだろうなって持論がまた確実性を増してきた。
いや。カッコ良過ぎだろ。
その走りはサッカー部や野球部の面々にもひけをとらず、2位で第三走者にバトンを渡した。
第三走者は、そう、黒川で、そのバトンがなんか二人の架け橋みたいで苦い気持ちになる。
黒川は短距離選手を抑え、2位を死守したまま、アンカーの野球部員にバトンを託した。
運動できて、姿かたちが良くて、それでもって頭も良くて……て、なんなの?
走り終えた二人は当たり前のように、吸い寄せられるように並び、第四走者の結果を見て笑いあった。
黒川の目はこっちがビックリする程優しくて……。
「眼福眼福」
すぐ傍で声が聞こえて目を向けると、それは影山で、当然のように撮影に勤しんでいる。
眼福じゃねえよ、ばか。
くそー。
なんかすっかり二人が恋人同士みたいに見えてきたじゃないか。
それはなんか……嫌じゃないか。
最初のコメントを投稿しよう!