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13
「よお関屋。食うか?」
「何を」
平林さんが風呂に行く姿が見えたから、例の湯上がりお色気ムンムン美人に仕上がった様を見るべく、自販機横のソファーでその時を待っていたわけだが、そんな俺の膝に、通りすがりの山口が白い大きなレジ袋をガッサリと乗っけた。
中には懐かしの駄菓子が。
「どしたん、これ」
「ケアハウスの祭りのボランティア行ったらくれた」
結構な量。これはもう報酬だろ
「好きなの取れよ」
「わーなっつー。え、何これ、ジュース? 水入れるん?」
ソーダの写真の小袋に、何これデザイン? くらい指紋がくっきり浮かんだセロテープで小さなストローが止められている。
「そのままじゃね?」
好奇心にかられ、ストローを外してから横の切り込みで開けてみると、甘いソーダの匂いがいかにも香料っぽく漂ってきた。
色はまあ、温浴剤?
「食いもんのクセに、えげつねー色だな、おい。しかも裸のストロー超イカス」
スタミナドリンクについてるような細っこいストローをくわえて袋の中につっこんでみる。
「なんかドラッグみたいじゃね?」
そう言って一気に吸い込んだ瞬間──
「ゴホッ!! ゴホッ?@! ガフッ」
思考停止。
誤嚥による肺炎を防ぐ為の身体の反射的防衛機能が働……て、要はまあ、むせた。
あまりの苦しみに考えることなんて出来ず本能のままただ咳き込み、息が出来ずに涙が浮かぶ。
爆笑する山口に吸いかけの悪魔の粉をおしつけて、身を折って吐きそうになるのを飲み込んだ。
とと、とんでもねえーっ!
え? 子どものお菓子?
「ゴホッ…苦し…ちょ、おま、これケアハウスから…?」
え? 人生の大先輩達を狙う目に見えない策謀……? こえーよ……。
と、そんな惨事の最中、当たりのいい低めの声が。
「大丈夫かよ」
「……!?」
ここここのこここえわっ!!
見ればそこには風呂上がりの匂い立つような色香をまとった平林さんの優美な御姿が。
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