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「ん?」 「逆ナンされて、ホテル行ったんだ、俺」 「まっまっマジでか!?」  180センチ、75キロのマッチョ系向島。  まあ、顔もそんな悪くないからわからなくはないけど、いかんせんおとなしい性格と、我が校の女子の圧倒的少なさと寮生活の三重苦。彼女なんて縁のない奴だったのにっ。  「なんで今まで黙ってたんだ貴様っ! 俺たちを嘲笑っておったのか!?」 「で、どどどどうだった」 「ホテル行って、キスして、おっぱい触って」 「まじかああああ!!!」 「うん。で、メインに手だしたら……」  みんな一斉にゴクリと咽喉を鳴らす。 「……チンコついてた」 「は?」 「まだ全部とってないオカマだったんだ」 「で、おまえ…」 「逃げた」 「お…おお…」  なんと返していいかわからないでいる俺たちの中、竹原が膝立ちになって拳を振り上げた。 「なんで逃げてんだよ!! 俺なら最後までやってるぞ! 乳あんだろ? 突っ込む場所にまあ違いはあるけど、イチモツさえ目にいれなきゃもういいよ。なんでも」  いや、目が怖いわ。 「落ち着け。それは」 「いーや。男だっていい。見た目綺麗なら男だってありだろ、もう」 「例えば?」 「桐山カイとか、1組の島津とか、平林さんとか」  き、来た。  まさかこいつらのエロ話に平林さんが出てくる日がこようとはっ。  仲間を見つけたという妙な喜びと別に、自分だけの宝の地図を見られたみたいな複雑な気持ちになった。 「平林さんといやぁ、髪切って妙に可愛くね?」  佐藤がさっき俺が思ったばかりのことを言うもんだからドキリとした。 「わかるっ。風呂上がり小悪魔セクシー」 「年上の余裕? 優しく筆おろししてくれそう」 「わかるっ。しょーがないな。こんなに大きくして、みたいな?」  いやいやいや、確かにそんな想像はできなくもないが、声に出して平林さんを汚すなっ!  あの人はそんなふうに面白おかしく扱っていいようなもんじゃないぞっ!  なんとか平常心を保とうとする俺に、佐藤がとんでもない言葉を吐きやがった。 「あ。想像したら勃ってきた」  はあああああ!?  ふざけんなよ、佐藤!! 「平林さん相手におっ勃ててんじゃねえよ!!」  俺の怒りを男相手に欲情するということへの非難ととったらしい竹原が、佐藤を擁護するように口を開いた。 「じゃあおまえ、二組の芦野愛と平林さんどっちかで抜けって言われたら?」 「平林さん」  自分でも驚くほどの即答。  すまん、芦野。お前に罪はないが、平林さんとは比べられないんだっ! 「だろ?」  ……つうかもう俺、平林さんで何回も抜いてる。そして芦屋では抜いたことない。それが答え。 「要はブ細工な女より綺麗な男なんだよ」  したり顔の竹原に、また向島がボソリと呟いた。 「ただ大事なことを忘れてるぞ」 「あん?」 「綺麗な男はもとより、ブ細工な女にも相手にされないという事実を」  チーンという音が聞こえた気がした。
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