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3
「よ。関谷」
「ああ」
当たり前のように平林さんの横に腰をおろす黒川。
ああ、二人は射撃部の先輩後輩になるのか。射撃部の顔面偏差値の高さに慄くわ。入部審査でもあんのか?
「いただきます!」
黒川はそう言うと、平林さんの手の中の茶を奪ってそれを飲んだ。
「あ、こら」
慌てて茶に手を伸ばす平林さんを、くすぐったそうに笑いながら押しのける黒川。
「あー、もう全部飲んだなっ」
「いや、小銭入れ持ってくんの忘れて。あとで新しいの買って返しますって」
「いーよ、もう」
背が高く筋肉質で浅黒い肌を持つ黒川と、小さいわけではないが華奢で色白な平林さん二人のじゃれあいは同年代の男同士というより何でかとんだバカップルに見えた。
くそッ、黒川そこ代われ!
……て、っは!?
今俺は黒川を羨ましいとか思っちゃった……?
おいおい俺ー。
「関谷、地央さん知ってたっけ?」
平林さんはチヒロというのか。美人は名前が既に中性的だな、おい。
「いや、面識は。射撃部ってのは知ってるけど」
平林さんは自らに垂れてきたらしい黒川の水の雫に目を釣り上げ、力任せに黒川の頭を拭き始めた。
「っちょ、地央さん、痛い」
そういいながら黒川の顔は笑っている。
平林さんこちらに向いて首を傾けると、思い出したと言うように口にした。
「一年ダブってるけど気遣わなくていいから」
「そうそう」
平林さんはしかつめらしい顔で頷く黒川に肩口をぶつけた。
「お前は別な。気を遣え」
「はあ? なんすか、それ」
「お前は俺を敬え。そして……あ、ヤバイ。バレー始まる」
「本当だ。あ、じゃあな、関谷!!」
「おやすみ」
テレビから抜け出したような見目麗しい二人は、バタバタと走り去ってしまった。
俺の心と股間に妙なザワめきを残して。
おいおい俺ぇー。
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