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 勇気を出して女子に話しかけたのは、先生に呼んでこいと言われたとき以来だったろう。  いや、あの時はマジあせった。  みんなが見てる中でイケてる某女子を呼び出すという公開処刑のような、先生これはなんかのプレイなんすかと聞きたくなるような苦行。思い出しても指が戦慄く。  そう。そんな俺が、イトコが前文化祭で平林さんを見て憧れてるからその画像をくれまいか、と話しかけたのだ。  影山は快くうなずき、俺はこれって肖像権的な犯罪にならんのだろうかと思いながら、イトコをダシに女子とLINE交換なんていう初体験を終えた。  すまんイトコ。  まあ、イトコはおらんのだがな。  そんな俺の初体験を礎に、俺(携帯)の中には平林さん(画像)が入ってる。俺はたまらず俺のモノ(携帯の操作キー)を指で弄った。  うん。今俺のテンションは正直おかしい。 「やばかわ」  卒業アルバムのものだろう。  もう何度も見たのに液晶に写る中学時代の平林さんに頬が緩む。  今よりも髪は短いが、成長期特有の線の細さと抜きん出た色の白さ、横に並ぶ同級生少年達との対比で、それは完全に学ラン着た倒錯系美少女だ。  中学の体育系イベントと思われる写真では、大きめの体操服を寒そうに女子袖にしていて、こんなもんは敢えて言われなければ男とは思えない。もう、なんか色々間違えてる。  そりゃ影山も絶叫するわ。  初めてこれらの画像を見たときはナンジャコリャと普通に声が出たもん。  黒川ってこういうの知ってるのかな? 見せてやろうかな。……って、いや、黒川はいつだって本物の平林さんの金魚ウンコなんだから、アルバムはおろか他の写真だって見ている可能性大だ。  あー、いいなあ。絶対かわいくないわけがないもんなー。  キラキラ輝いてる人間は、やはり小さいときから違うんだ。  腹の底からため息がこぼれた。
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