平成の忘れ物

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**** 「ありがとうございます」  俺は郵便局で支払いを終えて帰ってきた。  残りの小銭は、全部使い切ってやった。支払証書を見て、少しだけほくそ笑む。それを姉は「ふーん」と言いながら見ていた。 「まさか、そのまんま募金するとは思ってなかった。うちの町に」 「いいだろ。九万ちょっとじゃたかが知れているけど、なにもしないよりはだいぶマシ」 「まあ。あんただったらそれでいいんじゃない?」  ふいに姉は浮いた。それに俺は「おっ」と言う。 「帰るのか?」 「うん。お父さんとお母さんによろしく。一軒家なくなってしょぼくれてるからさあ……元気出せって言っておいて」 「まあ言っておくよ。……墓で会えるか?」  聞いてみたものの、姉ははぐらかした。 「じゃあね」 「おう」  こうして、俺は自宅に帰ることにした。  更地になってしまう町。もう帰ることのできない町。そこをぐるりと見回して、電車に向かう。  鼻の奥がツンとした。 <了>
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