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「ありがとうございます」
俺は郵便局で支払いを終えて帰ってきた。
残りの小銭は、全部使い切ってやった。支払証書を見て、少しだけほくそ笑む。それを姉は「ふーん」と言いながら見ていた。
「まさか、そのまんま募金するとは思ってなかった。うちの町に」
「いいだろ。九万ちょっとじゃたかが知れているけど、なにもしないよりはだいぶマシ」
「まあ。あんただったらそれでいいんじゃない?」
ふいに姉は浮いた。それに俺は「おっ」と言う。
「帰るのか?」
「うん。お父さんとお母さんによろしく。一軒家なくなってしょぼくれてるからさあ……元気出せって言っておいて」
「まあ言っておくよ。……墓で会えるか?」
聞いてみたものの、姉ははぐらかした。
「じゃあね」
「おう」
こうして、俺は自宅に帰ることにした。
更地になってしまう町。もう帰ることのできない町。そこをぐるりと見回して、電車に向かう。
鼻の奥がツンとした。
<了>
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