RE:降雪少女

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 子供の癖にと嘲る大人、まだ子供なのだからと危険から遠ざける大人。  しかし、騙し騙されという過酷なこの社会こそ、大人になった者達が抗えず脈々と継いできたものである。  自らの世代で何一つ是正出来なかった癖に、子を導く、導きたいというその勝手はどうだ。 「一度病院で検査を受けましょう」 「必要性を感じません。うちの親から頼まれたんですか?」 「ええ、頼まれた。頼まれたし、健康だってお墨付きを貰うのは、貴女にとって悪い事ではないと私も思う」 「そうやって私を精神疾患持ちにしたいんですね?」 「ねぇ、貴女のご両親に頼まれたって、私は肯定したでしょう?ご両親がそれを望んでるっていうの?」 「パパとママは私が異常だから上手くいかなくても仕方がないって、免罪符が欲しいんです」 「考え過ぎ。それに異常だなんて言葉、使うべきじゃないわ。ご両親はただ、貴女の事を心配しているの」 「なんでテイと遊んでるだけで!病院に連れて行かれるんですか!」  いけない、悪手だ。そう思いつつも、遂に大きな声をあげてしまう。  こうやって揺さぶりをかけて、私を病院に連れて行く大義名分を得ようとしているの、分かってるのに。 「ずっと一緒にいたの!ずっと一緒にいたいの!何で誰も分かってくれないの!?テイと遊んでたいの!ずっとオバケだのUFOだの下らない話をしてたい!それだけの事が何で許されないの!?おかしい!おかしいよ!おかしいじゃないか!」  叫び散らす私。しかし、思春期特有のそういった難しいあれこれに、 「えっと……その、ごめん、もう一回教えて…」 手慣れているはずの先生が、 「誰と会ってる、の?」  眉を潜めた。  全身の皮膚が粟立つ。なんだ、分らない。  私の心が、今すぐここから逃げろと危機を報せる。 「失礼します!」 「あっ!待っ…」  静止を振り切って、カバンすら持たずに保健室から逃げ出す。おかしい、間違っているのは私ではないはずだ。  私は拘りを崩してなどいない。  だって、こんなにテイに会いたいのだ。ほら、何も変わってない。だから雪など降らない。 「テイ、テイ、て…」  急ぎ、階段を駆け下りたその踊り場に、 「えへへ、きちった」  テイが立っていた。
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