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二か月ほど過ぎたある日。
深夜シフトを終えて、銀次が店を出ようとしたとき、店長に呼び止められた。そのままバックヤードに連れて行かれる。
「京極さん、悪いんだけど今週でウチの店辞めていただくことになりました」
バックヤードで二人きりになると、店長が言った。極まりが悪いのか、銀次と目を合わせない。
「そうですか、分かりました」
近々こうなるだろうと思っていた。このひと月の間に、夜シフトの小早川や早朝シフトの織田がいなくなって、代わりに時空難民が働いていた。だから、自分も首を切られるのは時間の問題だと思っていた。なにしろ、時空難民は銀次よりも低賃金で働くのだから。
もっとも、こんなことは銀次が働くコンビニだけではないのだ。テレビニュースによると、日本各地の職場で首切りが横行しているという話だ。
週末。銀次がコンビニを去るとき、ヤギュウは神妙な顔をして言った。
「済みません。ぼくたち難民のために首になって」
「ヤギュウ君が謝ることないよ。次の仕事探すから」
銀次はそう言ったけれど、不安はあった。時空難民がこんなに増えて、果たして仕事は見つかるだろうか。近頃は、時空難民の入国を禁止せよというデモが目に付くようになった。
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