時空難民

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 夜空に南十字星が見える。日本を立ったときに比べて、風が随分温かい。銀次と浅井は輸送船の甲板にいた。 「まさか就職先が帝国陸軍だったとはな」  銀次が夜空を見上げながら言った。  二人が入った穴の先は、二十世紀の1943年の日本だった。 「あの三好ってブローカー、とんでもないヤツだ。俺たちを騙しやがって」 「けど、言ってることは間違ってなかったな。住居も三度の飯もある」 「軍隊だから、当たり前だろ。こんな作業着も貸してくれたしな」  そう言って、浅井は軍服の袖を引っ張った。 「俺たちニューギニアに行くって言ってたか?」 「ああ、ニューギニアかそのあたりだと思う。アメリカの潜水艦に見つからなければ着くだろうよ」 「これが海外出張というやつなのかなあ」 「海外出張とはよく言ったもんだよ。あのブローカー」  浅井が毒づいた。
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