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兄は私の気持ちを知ってか知らずか、瑛ちゃんと私が個人的に連絡を取り合っている事にも何も言わずに見守ってくれていた。幼なじみとしての関係以上として見ていたのか、瑛ちゃんを兄の様に慕っていただけだと思っていたのかは分からない。
私が思うに瑛ちゃんは兄の大親友なのだから、兄が怒るはずも無いと思う。知らない誰かよりも信頼の置ける瑛ちゃんの方が兄としても安心出来るとも思う。
「瑛ちゃんと結婚するって言ったら、兄だけじゃなくて両親もびっくりすると思うよ」
やっと落ち着きを取り戻した私は、まともに会話出来るまでになった。
「そうかな? 俺達は家族ぐるみでの付き合いなんだから、そんなに驚かないんじゃない? 寧ろ、お互いに結婚相手が見つかって良かったね、みたいな感じじゃないかな?」
「瑛ちゃんて楽観的主義者ね」
「……良く言われる」
瑛ちゃんは深くは考えてなさそうだ。瑛ちゃんの祖父母の代から実家の店の和菓子を気に入って頂いていて、家族ぐるみでの付き合いはある。だが、忘れてはならないのは瑛ちゃんが総合病院の跡取り息子だと言う事だ。私なんかが瑛ちゃんのお嫁さんとして相応しいのか疑問でもある。
「今日は初音さんに店を任せて、このままサボっちゃえば? デートしよう」
「うん、たまになら初音さんも許してくれるかな? 更衣室で着替えして来るから待っててくれる?」
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