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「何なら、俺と結婚する?」
「……もう、瑛ちゃんは私の事をからかってばかりなんだから!」
通称、"瑛ちゃん"と呼んでいる人物は、私と兄の幼なじみだ。兄と同い年の彼とは六歳離れていている。
つい先日まで海外の有名な病院で働いていて、実家の病院を継ぐ為に帰国して三ヶ月が経つ。休憩時間や手隙の時に顔を出しては、小花衣の和菓子が大好きで生菓子やお饅頭など、その日の気分によって購入して行く。本日は休みらしく、少し前から店に来ている。
「ただいま、お使いから戻りました」
「おかえりなさい、初音さん」
兄のお嫁さん、小花衣 初音さんは私よりも二歳年上。落ち着いた雰囲気の正に大和撫子と呼べる和風美人。お店柄、お互いに着物を着ているが、初音さんが隣に居るだけで私は見劣りしてしまうのだった。
兄も初音さんも大好きな私。そんな仲睦まじい二人を見ている私も結婚適齢期になっており、多少焦っているのもある。
中にはお節介な常連のお客様が「次はお嬢様の番ですね。どなたか良い方をご紹介致しましょうか?」などと口にしていく為、焦りや鬱陶しさを感じてしまい、捌け口が見つからずに兄に嫌味を吐いてしまっているのだ。
「こんにちは、鷹司さん。休憩時間ですか?」
初音さんは瑛ちゃんを見つけて、声をかける。
「えぇ、今日は手術の予定もないのでお休みを頂いています」
「あら、そうだったんですね。お客様も居なくて、せっかく陽菜乃ちゃんと二人きりでしたのにお邪魔しちゃいましたね」
「本当にね、お邪魔虫ですね」
瑛ちゃんと初音さんは、いつも笑顔で話をしている。作り笑いの様な違和感を感じる時もあるが、お互いに敬語で話していて、会ったばかりなのに仲良しにも見える。私よりも歳が近いからかな?
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