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突然のプロポーズ?
【和菓子司"小花衣"】の元看板娘、小花衣 陽菜乃、26歳はここ最近、聞くのも飽き飽きしている台詞がある。
「この度は若旦那様のご結婚おめでとうございます。先代からこちらのお店を任されたと聞いていますし、重ね重ね喜ばしい事ばかりですね」
「えぇ、そうですね。有難うございます」
──常連のお客様とこの様な会話をするのは、もう何度目だろうか?
私の実家では老舗の和菓子屋を営んでいる。跡取り息子である私の兄がつい先日、様々な店舗がテナントとして建ち並ぶショッピングモールに第二号店として和菓子屋を開店したのだった。
ショッピングモールは1階から3階迄が吹き抜けになっており、和菓子屋は1階の食品テナントがある並びに位置している。
その後、一人前と認められた兄と婚約者は籍を入れて、噂を聞きつけた常連のお客様が駆けつけては同じ台詞を吐いて行くのだった。
「まーた結婚と開店おめでとうって同時に言われたよ。毎日聞くの、嫌になっちゃう」
「陽菜乃、そう言わずに笑顔で接客してよ」
出来たての和菓子をショーケースの所まで運んで来た兄に愚痴をこぼす。兄、小花衣 高雅は苦笑いをしては私をなだめた。
私は実家の和菓子屋では看板娘として通っていたが、手伝いのつもりで来ていた二号店では兄のお嫁さんも一緒に働き出したので肩身も狭くなっているのだ。
そろそろ本店に戻るか、そのまま引退するかを考える時期かもしれない。
兄のお嫁さんは家柄も器量も良く、両親や常連のお客様からの評価も非常に高い。それに比べて私は、ただ単にこの店の娘だと言う利点しかないのだった。
「陽菜乃は高雅をとられた感じがして嫌なんじゃないの?」
「ち、違う! そんな訳ないでしょ!」
ショッピングモールのすぐ横には、総合病院があり、その後取り息子である鷹司 瑛大は冗談交じりに話をかけてきては笑っている。
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