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デュエットパートが終わった後、芹澤くんも弾くのをやめた。
僕が彼の方を見ると、彼もこちらを見つめていた。
僕が小さく微笑むと、彼も笑ってくれた。
「すごいね、芹澤くんは…これ、投稿したばっかりなのに」
笑って言ってみる。
もう彼と会うのもこれで最後、だからやはりバレたところでもういいだろう。
「…やっぱり、暁さんなんですね」
「うん。いつから気づいてた?」
「最初から…1年の4月から」
「え!?」
思っていたよりもずっと前。
そんなに前から気づいていたのか、でもどうしてなんて思っていると彼がまた言葉を続けた。
「先生のピアノ聴いて、それで絶対暁さんだって思ってました」
「ピアノ聴いただけで?」
「はい。…ずっと好きで、聴いてたので」
そんな言葉に嬉しくなる。
僕のピアノを、好きで聴いてくれる人がいるんだなんて。
SNSでいいねやコメントは沢山貰っていたけれど、やはり直接言って貰えると嬉しい。
それに、彼に言われるからさらに嬉しい。
ピアノを弾いていて良かった…なんて、大袈裟かもしれないけど。
「僕も、芹澤くんのピアノ大好きだよ」
「…嬉しいです」
そう言って嬉しそうに微笑む彼にキュンとする。
「…実は、最後に先生に伝えたいことがあって」
突然そう言いながら、表情を隠すように彼は顔を俯ける。
なんだろうか、そう思いながら彼の言葉を待つ。
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