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「メメル――ッ!!」
アージェの慟哭が空に吸い込まれた瞬間、空は目もくらむほどに眩しく輝いた。制御核が粉々に砕け散ったのだ。
浮遊要塞は制御を失い、海に向かって落下していった。まるで木の葉が風にさらわれていくように。
ふたたび訪れた夜の中、浮遊要塞の水没する音が響き渡った。
火の手は収まり、静けさが戻ってくる。
「うう……メメル……メメルッ!」
地に突っ伏して嗚咽をあげるアージェにセリアが寄り添う。
「メメルちゃん、ほんとうにみんなを守ってくれたんだね……」
「あいつ、ひとりで格好つけやがって……」
アージェはふと、手のひらに違和感を覚える。
ゆっくりと開くと、そこには小さな淡青色の欠片があった。ひときわ眩しく光るそれは、拍動する種を内包していた。
目にしたふたりは驚いて顔を見合わせる。
「これ、もしかして――」
「ああ、きっとそうだ――」
それは、クイーン・オブ・ギムレットに蓄えられていた、メメルの『魂』そのものだ。
アージェはその石を握りしめ、拳を胸に押しあてた。
決意を固めて立ち上がり、メメルが消えた空を見上げる。
「セリア、俺も魔術学校を目指すよ。そして絶対なってやる。史上最高の魔術博士に」
セリアはアージェに寄り添う。少しだけためらいつつも、思いのたけを打ち明けた。
「だったら私、あなたの手伝いをさせてもらうわ。――きっと永遠の片想いになっちゃうけど、ね」
生命の再生など、成功するかなんてわからない。よしんば成功しても、どんな形の再会になるかなんて想像がつかない。
けれどアージェは思う。
人間の可能性は無限大だ。
だって人間は、大切なひとのためにいくらでも泣くことのできる、素晴らしい生き物なんだから、と。
輝く秘宝の中で、メメルは安らかに眠っている。
彼らが最高の魔術博士と呼ばれるようになる、そのときまで――。
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