きみに未来を

2/2
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「メメル――ッ!!」 アージェの慟哭が空に吸い込まれた瞬間、空は目もくらむほどに眩しく輝いた。制御核が粉々に砕け散ったのだ。 浮遊要塞は制御を失い、海に向かって落下していった。まるで木の葉が風にさらわれていくように。 ふたたび訪れた夜の中、浮遊要塞の水没する音が響き渡った。 火の手は収まり、静けさが戻ってくる。 「うう……メメル……メメルッ!」 地に突っ伏して嗚咽をあげるアージェにセリアが寄り添う。 「メメルちゃん、ほんとうにみんなを守ってくれたんだね……」 「あいつ、ひとりで格好つけやがって……」 アージェはふと、手のひらに違和感を覚える。 ゆっくりと開くと、そこには小さな淡青色の欠片があった。ひときわ眩しく光るそれは、拍動する種を内包していた。 目にしたふたりは驚いて顔を見合わせる。 「これ、もしかして――」 「ああ、きっとそうだ――」 それは、クイーン・オブ・ギムレットに蓄えられていた、メメルの『魂』そのものだ。 アージェはその石を握りしめ、拳を胸に押しあてた。 決意を固めて立ち上がり、メメルが消えた空を見上げる。 「セリア、俺も魔術学校を目指すよ。そして絶対なってやる。史上最高の魔術博士に」 セリアはアージェに寄り添う。少しだけためらいつつも、思いのたけを打ち明けた。 「だったら私、あなたの手伝いをさせてもらうわ。――きっと永遠の片想いになっちゃうけど、ね」 生命の再生など、成功するかなんてわからない。よしんば成功しても、どんな形の再会になるかなんて想像がつかない。 けれどアージェは思う。 人間の可能性は無限大だ。 だって人間は、大切なひとのためにいくらでも泣くことのできる、素晴らしい生き物なんだから、と。 輝く秘宝の中で、メメルは安らかに眠っている。 彼らが最高の魔術博士と呼ばれるようになる、そのときまで――。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!