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フェアプレイを尽くすための序文
ねえアリョーシャ。あなた、本当にしっかりしてこの事件を書きあげてね。
――『虚無への供物』
本書は私が実際に体験した事件を書く推理小説です。
ただし、現実的とは到底思われないような出来事ばかりが起こります。
登場する人物、交わされる会話さえ、ひどく現実離れして映るのではないかと存じます。
それらの特徴はいずれも、事件の真犯人によって意図され、演出されたものです。現実に忠実であろうとするほどに空想じみてしまうという、作家泣かせな事情があるのです。
私達の現実は、事件の真犯人――聖JKによって編集を受けておりました。
その点だけはどうか、ご理解いただきたく、よろしくお願い申し上げます。
ところで〈作家泣かせ〉という表現を使ってしまいましたが、私は作家ではなく、二十五歳の会社員です。まだ未熟ながら精一杯、社会の歯車を担っているつもりでおります。
そんな私がなぜ、このような小説を書くことになったのか。
どうして、わざわざ推理小説として書かなければならないのか。
すべて読み終えたときには、それらもまた自明となるでしょう。
どうか、楽しんでくださいね。
本書を読者として体験できるあなたが羨ましい。
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