うりえる章:赤鞠7つばかり誤算

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 挑発的にスカートを摘まみ上げられたのは無視する。隣に腰を下ろして、シガレットケースから取り出した煙草にオイルライターで火を点けた。あまねは煙草の煙を嫌がらない。 「とにかく、来須さんはそんなだから友達がいないんだよ」 「学生じゃあるまいし、友達なんているだけ煩わしいよ」  吸い込んだ煙をフーッと吐き出した。頭の中に重く溜まっていた疲れごと出て行って、つかの()、クリアになった心地がする。 「お前の方こそ、友達はいるのか。すみっこで読書してばかりじゃないだろうな」  あまねは本の虫だ。私室として与えた六畳の洋室は大量の書物に占拠され、他の家具が置けない有様(ありさま)となっている。 「見くびらないでよ。あまねは学校でカリスマなんだから」 「カリスマ?」  少なくとも、偉ぶって胸を張る仕草はカリスマっぽくない。 「みんなが注目してるの。あまねの話したことをメモに取って、繰り返し読んで感動している子だっているんだから」 「何だそれ。宗教でも興したのか」 「学校であまねがどんなふうなのか、気になる?」 「別に。それより昼に学校の近くで交通事故があっただろ」 「もお、つれないなあ。交通事故? あったよ」  不服そうに唇を尖らせながらも、あまねは頷いた。 「近くなだけじゃないよ。死んだ人のハトコが同じ学校の生徒なの」 「知ってる。話したりする仲なのか、その生徒とは」 「二人いるけど、片方は味方で片方は敵だねえ。来須さん、どうして知ってるの?」 「事故で死んだ水柱(みずばしら)(みお)の妹が、俺の職場の同期なんだ。前にあまねのことを話したら、ハトコが同じ学校に通っていると云ってたのを思い出した」 「その同期って水柱(なぎさ)さん?」  目を丸くするあまね。 「名前は聞いてる。すごい偶然だね」  渚は昼過ぎに真っ蒼な顔をして早退した。実姉とその旦那が交通事故で亡くなったのだと、課長からメールで周知された。残業中にも雑談で、事故のことが話題に上がった。 「本当に偶然なのかね? 事故の原因は猫が歩道橋から降ってきたことだとか」
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