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臆病者
隣で歩く蒼に触れたらどれだけ幸せか
「海斗?」
僕を呼ぶ君に触れたい。手を繋ぎたい。抱きしめたい。
…でも、ダメなんだ
「ごめん。ぼーっとしてた。」
あんまり考えすぎないでね。
半年前の六月、蒼に伝えた
「人に触れられない病気」
に気を使って言ってくれているのだろう
今日の散歩の目的地は海
波の音が二人の沈黙をより一層際立たせる
海に沈む夕日を見ながら僕は
大丈夫。このままでいい。今までと何も変わらない。大丈夫だから。
と心の中で何度も繰り返した。自分でも情けないがそんな風に言い聞かせていないと、今まで築き上げてきたもの全てが音を立てて壊れる気がして怖かったんだ。
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