11人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「私たちが、この色に意味を付けるってことか。なんかいいなあ」
父の後ろ姿を見送った後、他の浪士が言った。真っ直ぐな瞳で、表情は明るかった。
その言葉の輝きに、萬吉の中の何かが大きく揺さぶられ、じわじわと熱を持っていく。
「本当だな、平助。俺たちの活躍で、京都がこの色に染まるかもよ!」
「それはそれで困りませんか」
若い二人を筆頭に盛り上がる中、土方は苦笑いして腰に手を当てた。
「八木家に戻るか。腹減った」
「そうですね」
一行は萬吉に「お邪魔しちまった」と声をかけて屋敷の門を潜った。麻の羽織は既に皺だらけだ。
彼らの姿が見えなくなった後、萬吉は居ても立っても居られず、母屋に飛び込んではまた飛び出して彼らを追った。
「すんまへん!」
大きな声で呼び止めると、浅葱色の羽織の浪士たちは振り返った。
「火のし、かけさせておくれやす!」
最初のコメントを投稿しよう!