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 行き交う車両の群れを見つめながら、僕はまた健全ではない想像力を働かせる。  あの流れの中に身を投じたらどうなるのかと。でも、さすがにそれは得策じゃないと思いすぐに取り止めた。目の前で人が車に轢かれるところなんて、巻き込まれた側からすればとんでもないトラウマものだ。――それに、きっと僕はそんなふうに死ねやしない。何より、こんな場所でそんな大惨事が起きてしまえば、あっという間にニュースになるだろう。僕にとってそれは好都合なことではないし、何より面倒臭い。  じゃあ首でも吊って……なんて次の想像を膨らませてみるが、自分の荷重に耐えられるだけの紐を、生憎持ってはいなかった。あるとすればせいぜいベルトぐらいだが、革製のそれは少々使い勝手が悪いように思える。こういう時、制服が学ランじゃなくてブレザーだったら、迷わずネクタイを使うのに。そんなお門違いな悪態が浮かんで、僕はフッと息を漏らした。  ……こんなことばかり考えているから、いつまで経っても何も変われないのだろうな。  自嘲気味に苦笑し、改めて空っぽの自分を確認する。もう、いいかな。このまま死んでも。 誰かに迷惑をかけるわけでもなく、ただ静かに消えることができるなら。それでいいじゃないか。むしろ、それくらいしかできることはない。どうせ僕には、最初からそういう生き方しかなかったのだから。
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