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 繋がれた点滴の痛々しさも、酸素チューブによって補われている呼吸も、彼女が必死に戦っていることの証拠だったから。僕の自分勝手な願望なんかじゃ、真陽を救えない。 「……朔くん」  真陽が静かに僕の名前を呼ぶ。僕は返事をする代わりに、彼女の体を更に強く抱き締めた。それを合図に、真陽も僕を抱き締め返してくる。 「私の最後のお願い、聞いてくれる?」  涙声のまま、彼女が僕に尋ねた。嫌だ、なんて言えるわけがなかった。僕は震える唇を何とか動かして「うん」と、ただ一言だけ返事をした。 「……朔くんの演奏が聴きたい」  泣きながら、彼女が言う。僕はゆっくりと体を離して、彼女の顔を見た。涙で濡れた瞳に、情けない顔をした僕が映る。僕は涙を拭うと「分かった」と、素直に首を縦に振った。  病室だとさすがに迷惑になるだろうと思い、僕は一度部屋を出て、ナースステーションにいる看護師さんに声を掛けた。事情を話して、どこか演奏をできる場所を用意してもらえないか尋ねたところ、幸運なことに講堂を貸してもらえることになった。それからすぐに担当の看護師さんが来て、真陽の移動の手伝いをしてくれる。移動用の点滴スタンドと酸素ボンベが取り付けられた車椅子は、彼女をより病人らしく見せた。
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