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「じゃあ、三十分後に迎えに来るので、それまで真陽さんのことお願いしますね。もし何かあれば、そこの壁に掛かってる院内の電話からこの番号に掛けてください」  そう言って、看護師さんは僕にPHSの番号が書かれたメモを渡してくれた。僕は小さくお辞儀をして「分かりました」と返事をする。看護師さんが去るのを見送ってから、僕は背負っていたギターケースを下ろした。僕らしかいない講堂はひどく静かで、まるで世界に僕ら二人だけが取り残されたようだった。真陽は車椅子に乗ったまま、僕をじっと見つめている。僕はケースからギターを取り出すと、彼女の側へと歩み寄った。 「リクエストとか、ある?」  僕の問い掛けに彼女が頷く。聞かなくても分かっていたけど、僕は彼女の言葉を待った。 「『星降る夜』が聴きたい」  予想通りの答えに、僕は思わず苦笑した。「いいよ」と答えてから、僕はゆっくりとギターを構える。それからチューニングを済ませて、小さく息を吸った。真陽の視線が僕に向けられる。そんな彼女に応えるように、僕はそっと弦を爪弾いた。静かな講堂に、ギターの音色が優しく響く。真陽は目を閉じて、演奏に耳を傾けていた。僕は彼女から目を逸らさずに、最後まで演奏を続けた。
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