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――それからの一日一日は、本当にあっという間だった。年末、年始と日々が過ぎ去り、真陽の容態は日を追うごとに悪くなっていった。体を起こすことさえままならなくなり、真陽は一日の大半をベッドの上で過ごすようになった。点滴の数も日増しに増え、彼女の命を繋ぎ止めているようにも、彼女を死に誘おうとしているようにも見えた。体の痛みが出始める頃には、鎮静剤の影響で眠る時間が増えていった。
一月十五日。
この日が真陽と言葉を交わした、最後の日になった。いつも通り病室を訪れると、真陽はここ最近の中では珍しく起きていた。酸素マスクの奥に覗く輪郭は痩せ細っていたけど、顔色自体はそんなに悪くないように見える。僕はベッドサイドに置かれた丸椅子に腰を下ろして、彼女の手を握った。真陽が、僕の手を握り返す。
「……今日はね、調子がいいんだ」
そう言って、真陽が微かに笑う。僕は彼女の手を更に強く握り締めて「そっか」と頷いた。心電図モニターが、真陽の心拍数を小刻みに刻んでいる。
「……朔くん」
「うん?」
「前に私が言ったこと……覚えてる?」
不意に真陽が尋ねた。僕はすぐに応えられず、次に紡がれる彼女の言葉を待った。そんな僕の反応を、真陽は怒るでも悲しむでもなく、最初から答えなんて求めていないように、ただゆっくりと言葉を紡いだ。
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