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「……お久しぶりです」
土曜日の昼過ぎ、僕は真陽の家を訪れていた。玄関先で僕を出迎えてくれた真陽のお母さんは、最後に会った時よりも、少し痩せたように見えた。
「須夜崎くん……ありがとうね」
真陽のお母さんは僕を家に上げながら、小さくお礼を言った。僕は「いえ」と短く答えてから「お邪魔します」と靴を脱いだ。通されたのはリビングだった。隣の和室から真陽の仏壇が見える。僕は胸が締め付けられる思いで、一言「お線香、あげてもいいですか?」と尋ねた。真陽のお母さんは小さく頷いた。僕は仏壇の前に座り、お線香を焚いた。それから、手を合わせて目を閉じる。真陽が亡くなってから、初めてするお参りだった。
「真陽、喜んでると思う。須夜崎くんが来てくれて」
僕の後ろで、真陽のお母さんがそっと呟いた。
「……そうだったら嬉しいです」
仏壇を見つめたまま、僕は言った。写真の中の彼女が、僕を見て笑ったような気がした。真陽の仏壇の前で手を合わせ終えてから、僕は真陽のお母さんに勧められた椅子に腰を下ろした。テーブルの上に、見覚えのあるノートが置いてあることに気がつく。
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