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「これ……」  思わず呟くと、真陽のお母さんは「やっぱり、知っていたのね」と、どこか納得した様子で頷いた。 「あの子の荷物を整理していた時に、見つけたの。きっと、須夜崎くんに渡すつもりだったんだと思う」  真陽のお母さんはノートを手に取ると、それを僕へと差し出した。表紙には「叶えたいことリスト」と書かれている。紛れもない、真陽の字だった。僕は震える手でノートを受け取ると、表紙をめくった。これまで彼女が書き留めていた、たくさんの願いごとが目に入る。知っていたはずなのに、ページをめくる度に僕は彼女のことを何も知らなかったのだと、思い知らされた。 「……全然、叶えられてないじゃないか……」  気がつけば、僕は泣いていた。ノートには三百個以上の願いごとが書き記されていた。僕が知っていたのは、そのうちのたった半分にも満たない。真陽の願いは、どれも些細なものだった。けれど、その一つ一つが彼女の夢だった。  ――生きて。  最後の願いを思い返して、また涙が溢れる。そして、最後のページに辿り着いた時、そこに綴られた内容に、僕はいい加減嗚咽を堪えることができなくなった。
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