第四十四話 無謀な賭け

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確かに、その可能性はあった。  西の国の都ナムサに接しているファヒド湖に着いた後、力任せに攻める前に情報収集をしようと、湖を挟んで対岸にある廃屋に陣を敷いた。それから、斥候(せっこう)を送りつつ、手頃な敵兵を捉えて二週間近く、拷問にかけて情報を絞り上げた。  その作戦は実際のところ効果があった。おかげで奴らの都ナムサの街路図を作ることもできたし、番兵の配置も分かった。それに奴らが(みかど)といって祭り上げている相手が僅か十四歳の少年だという驚きの事実も知ることができた。  だが、拷問も一週間を過ぎたあたりから吸い上げられる情報が唐突に減った。何度聞いても、知らない、の一点張りを繰り返されるようになり、殴っても斬りつけても焼けた鉄を肌に押し付けても、目新しいことを吐かなくなった。  拷問をすることにそれほどの罪悪感はなかった。だが、いくらやっても新しい情報が出ないなら、時間の無駄だった。それに窓もない日干し煉瓦(れんが)の廃屋の中であの苦悶(くもん)の声を延々聞かされるのは気持ちの良いものでもない。 「続けるべきだと思うか?」
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