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振り返ってフェリクス卿に問いかけた。彼は頷いたが、表情には迷いがあった。
「その方が良いかと、仮に攻撃を仕掛けるにしても、奴らの王宮の内部がどうなっているか分からないのは好ましくないと心得ます」
同意を示すように首を縦に振った。
斥候が持ち帰ってきた情報と拷問の結果を勘案すると、ナムサはほぼ正方形の街だった。四隅には宗教的な意味合いがあると言われる尖塔が立っており、四隅を結ぶように外壁が巡っている。内側は正方形を敷き詰めたように十六に区画が分けられているらしく、ちょうど街の中心に帝と呼ばれている王族が住む王宮と邪教の本山である寺院がある、とのことだった。
問題はその王宮の内部だった。
王宮は遠目から見た限りでも他の家屋の四倍から五倍近い高さがある。それが吹き抜けという事は考えづらく、階層が分かれているとするのが自然だった。だとすれば、どの階層に奴らの帝がいるのか、警備がどうなっているのか、それがまるで分らないまま力づくで押し入るのは無謀だった。何より、仮に押し入れたとしても逃げ出せなくなる可能性もある。
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