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「やはり火を放つしかないか」
考えが口を突いた。いつの間にか隣に立っていたフェリクス卿が自分に賛成するかのように小さく首を振った。
今、最も可能性が高いのはその方法だった。朝方、敵方が寝静まった後に街の四方にある尖塔に火を放ち、敵方を混乱させ、その隙に王宮に討ち入って帝の首を獲って邪教の指導者を血祭りにあげる。それが一番現実的だった。
しかし、火を放てば王宮の警備が厳しくなって討ち入りの妨げになる可能性もあった。それに王宮の中が分からなければ、それこそ一部屋ずつ回って確認しなければならない。その間に敵方が集まってきたり、最悪は自分達が炎に巻かれてしまったりする危険もある。そう考えるとおいそれとは決断できなかった。
「敵兵を少しでも街の外に釣り出せればよいのですが」
フェリクス卿が呟いた。
その通りだった。誰かが囮となって街から敵兵を釣り出してくれれば、がら空きになった都を攻め落とすのは格段に楽になる。
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