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その廃屋はしんとしていた。部屋の真ん中にはムスタファ地方独特の曲線の足を持った机がある。その上に燭台と麻の布に描かれた都ナムサの街路図が置かれていた。
燭台の灯が部下達の顔を浮かび上がらせていた。誰もが沈んだような表情をしている。
机の前に立ったまま、正面にいるヴェルドレの奥の虚空に焦点を合わせた。燭台の小さな光に照らされた日干し煉瓦の赤茶け具合が目に入る。
迷っていた。ここに到着したのは6月7日で、今日が6月21日、駐留を始めてもう二週間近く経っていた。
これまでは斥候と拷問で順調に情報を集められていたが、それももう限界に来ていた。斥候をいくら送ってもさすがに敵方の王宮内に潜り込ませることはできなかったし、拷問をいくらしても相手が知らないことは調べようがない。
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